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第十章 周囲の理解の必要性について

 

●第十章 周囲の理解の必要性について

 

 PTSDは、大変苦しい。気分を自分の意志でコントロールできなくなる。
周囲の者は、「気分的な問題だろ」と言うが、その気分を自分の意志でコントロールできなくなるのだから、健常人には決して理解出来ない。健常人でも仕事や人間関係で無性に困惑し、何もかも嫌になることがあるだろう。まさにそういうような状況である。言うなれば普段の心と重苦しい心に、分かれてしまった感じなのである。
 しかし、重症の場合を除き自分自身を喪失しているのではあるわけではないから、何とか自分自身の心の状態を安定に保とうとする。そして上記の様な症状が長く長く持続し、いつ回復するのかと思い苦しみの淵に落ちていく。
また外見上外傷があるわけでもなく、その苦しみを周囲の者に理解してもらうのに非常に苦労する。
よって周囲の者は、異口同音に「頑張れ」と最も言ってはいけないことを口走ってしまうのである。
心の中は見えないのですから当然といえば当然である。見せてあげられるものなら見せてあげたい。

 私の場合は友人、会社の上司、同僚そして家族に理解してもらうのに大変苦労した。
私は本来自分の思っていることを直ぐ口に出す性格だが、それができなくなり、上司から叱責を受けたときも当時

反論出来なかった。
言いたくとも言えないのだ。言葉が浮かばないのだ。何をどう言っていいのか、分からない。
そのうち自責の念にかられるようになっていった。

被害者は自分であるが、皆に理解してもらえないのは自分が悪いのだ。私が周りの皆を不幸にしているのだと加害者のような気分にさえなってくるのである。
後で涙ながらに、現在の症状を説明した。でも当時は分かってもらえなかった。

非常に悔しかったのを今でも覚えている。

「何で自分がこんな思いをしなくてはならないのか、どうして周囲の理解の理解が得られないのか。」自問自答しても答えは

出ない。頭が回らないのだ。言葉にして説明したい。

しかしその説明するための適切な的を得た言葉さえ思い浮かばないのである。

 回復には絶対に周囲の理解が必要なのだ。私の場合は、実際周囲に理解して貰うのに1年の歳月を要した。

それは通り一遍等の「大変だったな」と言う意味ではなく、心的外傷後ストレス障害がいかなるものかという事と、これに付帯

する症状についてと何といっても性格の問題では無いということである。

事故に遭遇する前の私の性格を知っている人は、比較的早く理解してくれたと思う。
でもまだ理解してくれない人もいることはいる。もうそんな人に説明するのは止めた。人の苦しみを理解できないような人は

必ずどこかで損をする。気づいたときはもう手後れです。もう誰もその人の事を支持してくれなくなるでしょう。

また表面的な付き合いしかしてくれなくなるでしょう。

正直に言えばまだ、若干の症状があり苦しい。痛い思い、辛い思いをした。

しかし大変素晴らしい経験をしたと思っている。
精神疾患というものが大変良く分かった。精神疾患で苦しんでいらっしゃる方々に対する偏見が全く無くなった。

自分の周囲の人たちの本当の人間性が分かりました。上記のように理解してくれない人の人間性だ。

現在も地下鉄サリン事件や阪神淡路大震災など自然災害や事故が原因で、苦しんでいる方々がいらっしゃることでしょう。

その方々の周囲にいるみなさまに謹んで申し上げます。
 

  1. そっとしておいてあげてください。

  2. そして苦しんでいる方々が徐々に回復してくるのを傍らで暖かい目で見守ってあげてください。

  3. 励ますような言葉は絶対に言ってはいけない。本人は物凄く頑張っている。これ以上何を頑張れというのか?。

  4. 本人が気分が向かないのに外に連れ出すことは絶対によしてください。

  5. 無理解は逆効果になります。

  6. 素人が除反応まがいな行為に手をだしては絶対にいけません。病気では有りませんが、酷いショック状態にあるのです。

  7. 本人の気持ちを良く聞いて差し上げ、話を聞いてあげるだけでよい。

  8. 周囲の者が良く理解してあげることが回復を早めます。


どうか傍らで暖かい目で見守ってあげてください。
それが周囲のあなたの出来る事です。


現在も苦しんでいらっしゃる方々にも謹んで申し上げます。

近い将来、もうすぐ苦しみが、良い意味で諦めに変わり、そして喜びに変わります。

そうすれば私の様な心境に変わります。
そうなるように共に癒しの道を歩もうではありませんか。そして喜びに変わったら、今度は苦しんでおみえになる方々に、私たちが出来うる事を行なおうではありませんか。それが人に対する思いやりであり、人の道です。

諦めず前に進み、良い方向に向かわれんことを深く深く願う次第である。

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